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bit Labs(ビットラボ)が挑む、アナリティクスの最前線。田中 穣(ゆたか)福島 健吾

bit Labsがいま注力しているのが、最先端のアナリティクスです。機械学習を自動化するソリューションを駆使し、お客様とともに並走するアナリティクスとは?本記事ではアナリティクスチームの田中穣と福島健吾を迎え、展望を探っていきます。

お客様の全社的な課題となってきたデータの利活用

おふたりの現在のお仕事、役割について教えてください。

田中 私自身はアナリティクスチームをまとめる仕事を任されています。我々のチームは昨年からスタートしたのですが、もともと野村総合研究所(NRI)社内の「生産革新本部」という「開発の生産性を上げる」ことがミッションとなるところで技術メンバーが揃っています。これまでは「データ分析」と言うと主にコンサルタント等の部門が行ってきたわけですが、時流により、技術畑のメンバーもデータ分析に関わるようになってきています。これにはAI、機械学習のツールが進化してきたのと同時に、クラウドの進歩によって今までできなかったようなことができるようになってきている背景があります。データサイエンティストには、3つの能力が求められると言います。「ビジネス力」、「サイエンス力」、そして「エンジニアリング力」です。私は主に「エンジニアリング力」を軸足にしてチームを担っています。福島 私は主にアナリティクス、データ分析の仕事をしています。分析の課題を持つお客様を支援するため、データ分析やデータとデータの中に潜む関係性を導き出すモデル構築などを行っています。モデルというのは、例えば「価格を下げたら、どれくらい売上が増えるのか」を数式に置き換えて提示するようなことです。

この数年、ビッグデータの活用が課題となっていると言われています。おふたりは以前からデータ分析に従事されてきたスペシャリストですが、このところの時代の変化は感じ取っていますか?

福島 はい。これまではクライアントの担当レベルで終わっていた仕事に、経営陣がコミットすることが増えていると感じています。つまり、データの利活用が全社的な課題となってきているということです。田中 弊社では、これまではクライアント企業の情報システム部とやりとりすることが多かったのですが、最近のようにデータ分析となると経営に直結するので、事業部門や経営陣などITの担当ではない皆様に新しい課題をいただくケースが増えてきましたね。営業のパフォーマンスを上げたり、1to1マーケティングといった個に迫るマーケティングをしていきたいとか、そういったニーズは多くなってきました。

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そんな中、ビットラボでは新たに「DataRobot」という機械学習プラットフォームを利用されているそうですね。「DataRobot」について教えてください。

田中 「DataRobot」は機械学習を自動化するソリューションです。現在データサイエンティストは、様々なデータを見ながら分類するようなモデル――例えば貸し倒れの確率を予測するモデル――を、データをもとに数式に落とし、作っています。その作業にはとても時間がかかりますし、モデルも組み合わせを含めると何百、何千通りにも上ることがあります。その中からひとつ最適なものを選ぶことは経験と勘では難しく、時間もかかる。それを「DataRobot」なら、ある程度自動的にやってくれるようになります。データサイエンティストの生産性に大きく貢献しますし、実際に複数試して精度の良いモデルを選ぶことができるため、いま非常に注目されているツールです。我々もそのツールを活用していきながら、アナリティクス自体にイノベーションを起こしたいということで、2018年11月より販売代理店契約を締結しました。もともと2017年から「DataRobot」のSIコンサルティングパートナーになっていて活用はしていたのですが、販売代理店になることによって、コンサルティング(PoC)の成果がでた後に、システムインテグレーションによる業務実装までをスピーディにサービス提供できるようになりました。

「DataRobot」を必要とする会社は、どんな会社でしょうか。

福島 データを持っていて、かつ優秀なデータサイエンティストが確保できていない、あらゆる業種の企業ですね。もう少し付け加えると、データサイエンティストを多少は確保できていても、それ以上にテーマに広がりを見せ、様々なデータを活用することになった場合、そこに少数の優秀なデータサイエンティストを充てるというのはやはり現実問題として難しいと思います。育成や外部委託もコストがかかります。そこをツールでカバーできないかと考えている企業にはニーズがあると思います。田中 「DataRobot」は「AI(人工知能)の民主化」を謳うアメリカのベンチャー企業が作ったプラットフォームです。彼らはいま「市民データサイエンティスト」という言葉を使っているのですが、これはデータの専門家であるデータサイエンティストではなく、「DataRobot」のようなツールを用いてデータ分析をすることが得意な人々のことを指します。2019年には市民データサイエンティストの分析量が本職のデータサイエンティストを上回るという予想も出ているんですね。実際には、トップのデータサイエンティストが何名かいたとしても、分析の対象が広がりを見せる中では、ビジネスやシステムの各部門において人材の取り合いになります。そこで重要な役割を果たすのが、ドメイン知識を持ちながら、ツールを用いたデータ分析も可能な市民データサイエンティストになるというわけです。福島 「DataRobot」は生産性と精度という意味で非常に効果的なツールなのですが、その一方で、データサイエンティストの世界はそれがすべてではありません。その前後にいろんな工程があるんですね。まずデータを揃えることが必要です。目的に合わせてデータを加工したり、それ以前にその目的やゴールをはっきりさせる必要があります。そういったことを考えずに「DataRobot」に予測をさせ、精度の高いモデルができたとしても、それを活用することは難しい。また、その予測結果に基づいた施策を行うための意思決定は「DataRobot」ではできません。やはりデータサイエンティストが必要になると思います。予測の結果、ビジネスの現場にいる方々に納得して行動してもらうことも大事です。コンサルティングの際に先方にお伝えする場合は、「なぜなのか」ということが非常に重要になります。「DataRobot」の導入を支援する場合でもこの部分は非常に重要で、単純にツールを入れて終わり、というのではなく、PoC(概念実証)などを通じてお客様とともに並走することで、お客様自身に成功してもらいたいと考えています。

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チームとしての今後の目標を教えてください。

田中 新規ビジネスであれ既存のビジネスであれ、データを見て科学的に分析しながら、その分析結果からエンジニアリングや業務デザインに繋げていき、また新たにデータを取得して分析するというサイクルを実現していきたいと思っています。その中の分析部分について、世の中にもっと革新をもたらしたいと思っています。我々のアイデンティティからすると、ツールや技術力をデータサイエンスの領域で経験を積んでいる人たちと組み合わせて、ビジネスに詳しいコンサルタントと一体になって、お客様に付加価値を提供していくことを目指しています。bit LabsはUXやアジャイル/スクラム開発というところからスタートしましたが、そこにアナリティクスというピースをはめることで、本当にお客様が求めていることをチームで実現していくことが、チームリーダーとしての私の本分だと思っています。

田中 穣

田中 穣Yutaka Tanaka

上級システムコンサルタントプラットフォームアーキテクト

2004年野村総合研究所入社。入社以来、テクニカルエンジニアとして、最先端のオープンソースを活用したミドル開発や基盤構築を担当。その後、オープンソースのサポートビジネスの立ち上げ・拡大に従事。現在はアナリティクスに活動を移し、アナリティクスチームのリーダーとしてPoCの支援や、DataRobotの普及・展開を行っている。

福島 健吾

福島 健吾Kengo Fukushima

上級システムコンサルタントデータサイエンティスト

大学を卒業後、印刷会社でデータマイニングに関する研究やシステム開発業務に従事の後、ネットリサーチ会社に転じ統計解析部門のアナリスト及びマネージャを経て、野村総合研究所に転職。データ分析に関わるプロジェクトに多く携わる。2017年4月に国内で初のデータサイエンスに関する学部が設置された滋賀大学にて、データサイエンス実践に関する講義を担当。2019年1月よりbit Labsに参加。経営情報学修士(MBA)。