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ブロックチェーンで何ができるかを、一緒に考えていく。近藤 健/戸島 達哉/田中 優斗

仮想通貨を支える技術として、近年注目が高まるブロックチェーン。非中央集権型の取引を実現する技術として、各方面からの期待を集めています。本記事ではブロックチェーンのR&Dチームの近藤健、戸島達哉、田中優斗を迎え、その実態と展望を探っていきます。

みなさんの現在のお仕事、役割について教えてください。

近藤 私はR&Dを中心に活動しており、昨年度からブロックチェーンに注目しています。その時から注力しているのが、ブロックチェーンで作られたネットワーク上で、ある商品を取引するプラットフォームのプロジェクトです。このプロジェクトは、もともと「PoC(概念実証)でやってみたい」というお話があって、そこからスタートしました。我々のチームでは、もともとブロックチェーン技術を使って、どうアプリケーションを作るかというのがひとつの研究開発のテーマになっているんですね。その流れでプロジェクトを進行中です。

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ブロックチェーン技術は、ビットコイン(bitcoin)の隆盛とともに、広く名前が知られるようになりましたね。

近藤 そうですね。ブロックチェーンは分散型の台帳技術といわれるなど、改ざんが不可能な形で情報を分散して記録する仕組みで、非中央集権型の取引を実現することができるものといわれています。ご存知の通り、ブロックチェーンを使った代表的なものとしては、ビットコインやイーサリアム(Ethereum)などがあります。ビットコインは数字しか扱わないので「通貨の帳簿」などと呼ばれていますが、イーサリアムは数字だけでなくアプリケーションをやりとりすることができるものです。そのため、さまざまな所有権のやりとりが可能になるということで、いま世界中の注目を集めています。戸島 私はクライアントサイドのiOSアプリなどを作っていましたが、2018年6月からブロックチェーン関連の研究開発プロジェクトに入って、R&Dに取り組んでいます。具体的な内容としてはブロックチェーンを使ったアプリケーションをどうやって作ればいいかということですね。ブロックチェーンは新しい技術なので、その周りのiOSアプリを作るのには特殊なやり方が必要で、けっこう難しいんです。それをどうやったらうまくいくのか、さらに次の新しい技術が出てきた時にどうすればいいか、今どのように整備したらよいのかを試行錯誤しています。技術の移り変わりも早いので、外部の勉強会などには積極的に参加しています。田中 私は2018年の5月からプロジェクトに参加しています。ブロックチェーンで作られたネットワーク上で商品を取引するプラットフォームのプロジェクトですが、それをiOSのアプリから操作できるようにするための開発を担当しています。もともと自分はモバイルアプリのフロントの開発、UIデザインを得意としており、参加することになりました。今はその公開直前のiOSアプリをリリースするための準備をしている状況です。

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アプリの内容についてはリリース前ということなので詳しく本記事では触れることはできませんが、非常に楽しみです。同様にブロックチェーン技術を使って何かをしたいというようなお客様からの問い合わせは増えていますか?

近藤 いくつか問い合わせは来ているようですね。証券システム部門のブロックチェーン関連のプロジェクトを立ち上げているリーダーのところにそういった情報は集まっていまして、内容は我々チームにも共有してもらっています。我々のチームには特殊なミッションが降ってくることが多く、新しい技術を開発しながら進んでいくことも少なくありません。戸島 そのためにスピード重視という形で、とにかく早くプロトタイプを作ってお客様に見せるようにしていますね。私自身はもともとサーバーサイドをやっていたので、モバイルは2018年1月から初めて取り組みました。ブロックチェーンについても社内の勉強会に参加して学んでいきました。近藤 いまや、もう彼は講師です。もともと野村総合研究所(NRI)の社長自身がブロックチェーンについての長期的展望をしっかり持っており、社内の勉強会が立ち上がったのも早かったですね。

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ブロックチェーンは新しい技術で変化も早いということですが、みなさんは情報をどのようにキャッチアップしているのでしょうか。

戸島 ブロックチェーンについての基本的な内容は本で勉強することができますが、最新の情報は、たとえばイーサリアムの複数の作者のSNSをフォローしておくなどして得るようにしています。本になるまでのタイムラグで情報が古くなってしまうので。それと社外の勉強会でしょうか。近藤 開発者が集まるコミュニティで「こういう論文があるよ」という情報が入ってきたら、それを引っ張りだして読むこともありますね。

今後のチームにおける目標、そして個人としての目標をそれぞれ教えてください。

近藤 せっかくキャッチアップしたブロックチェーン技術なので、外部にいろいろ発信できたらいいなと思っています。今までにないサービスを我々が裏で支えるようなことができるといいですね。また、ブロックチェーンの使いどころを見極めることも必要だと思っています。全部をブロックチェーンでやろうと思うと、とてもお金がかかってしまって現実的ではないんですね。バランスを見ながら活用していくことが大事だと考えています。個人的には、これからもあまりNOと言わず、何でも来いという感じでやっていきたいですね。我々のお客様はアプリケーションを作っているチームなので、新しいことをどんどんやっていく人たちです。それにどう応えていくかが大事かなと思っています。そういう方々とコミュニケーションをどう繋いでいくかを大切に考えていきたいと思います。戸島 ブロックチェーンは今はまだ世界的にキラーコンテンツが出ていない状況なので、まだ一般の人には仮想通貨の技術というイメージが強いのだと思います。仮想通貨以外の使い道で、「これがブロックチェーンで作られているんだ」という決定版を1個でも作れたらいいなと思っています。個人的には、まだ自分は入社して2年目なので、今は目の前の仕事をひたすらやることが大事なんですが、社内でも、自分が第一人者だと言える何かを見つけたいなと思っています。田中 今はローンチ間近のプロダクトを、無事に市場に送り出していきたいなと思っています。個人の目標としては、お客様が求めているスピード感にさらに応えていきたいと考えています。スピード感で大事なのは、お客様の本当に欲しいものを動く形で提供するというところにあるのかなと思っています。ですので、お客様のニーズをきちんと汲み取りながら、それをUIデザインに落とし込み、動くものを作ってフィードバックをもらっていく――そういったサイクルをどんどん早く回せるようにしていきたいなと思っています。

近藤 健

近藤 健Takeshi Kondo

上級テクニカルエンジニアプラットフォームアーキテクト

2006年野村総合研究所入社。入社以来、テクニカルエンジニアとして、ミドルウェアの開発や大規模プロジェクトの技術支援を担当。その後、JavaやJavaScriptのフレームワークから、サーバレスやKubernetes、ブロックチェーンなど、新技術の研究開発や導入支援を実施中。

田中 優斗

田中 優斗Yuto Tanaka

副主任テクニカルエンジニアフロントエンジニア

2015年野村総合研究所入社。学生時代に学んだ人間工学やデザインスキルを軸に、フロントエンジニアとして、証券・流通・金融のプロジェクトに従事。Swift/React Nativeでネイティブアプリ案件の設計・開発を担当している。現在は、DApps(分散型アプリケーション)のリリースに向けて日々奮闘中。

戸島 達哉

戸島 達哉Tatsuya Tojima

テクニカルエンジニアプラットフォームアーキテクト

2017年野村総合研究所入社。学生時代にスタートアップ企業でソフトウェアエンジニアとしてアルバイトに従事。入社後は、ブロックチェーン案件においてReact Nativeを用いたフロントエンドアプリケーションの開発を実施。現在は、ブロックチェーン技術の研究開発を主な業務としつつ、大規模案件において、Kubernetes等のコンテナ関連技術、JavaScriptフレームワークの導入支援などを担当。