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NRIとDataRobotが考える現場力を向上させるためのデータサイエンス領域での取り組みDataRobot Japan オガワミキオ福島健吾大野真一朗

機械学習を自動的に行う「AutoML」という分野で世界トップクラスを誇るAIプラットフォーム「DataRobot」。本記事ではDataRobot Japanのオガワミキオ氏をお迎えし、アナリティクスチームの福島健吾、大野真一朗とともに「DataRobot」の可能性、そして企業にはどのような提案を行っていけるのかを探っていきます。

オガワ DataRobot Japanのオガワです。「カスタマーフェイシングデータサイエンティスト」という肩書きで、お客様に相対しながらお客様のビジネス課題をどう解いていくのかというところをメインに担当しています。

福島 私は野村総合研究所(NRI)のデータサイエンティストで、オガワさんと似たような役割を担っています。これまで自分がスクラッチでやっていたところを「DataRobot」が自動化してくれるようになり、「DataRobot」の比重が高まってきたところです。

大野 私はNRIで機械学習エンジニアとして、AIのエンジン開発を担当しています。「DataRobot」については、お客様向けの製品導入支援やAIの活用戦略の策定といった、計画~実行までのフェーズをエンジニアの立場で担当させていただいています。

オガワさんはDataRobot Japanの3番目のメンバーだそうですね。

オガワ まだオフィスもない頃で、最初のミーティングがオフィス見学、兼ミーティングみたいなところから始まりました(笑)。その当時はインフラの部分やプロダクトマネジメントの部分や新しいパートナーさんを作っていくところ、トレーニングなど、幅広く担当していました。そこからサポートのチームやプロダクトマネージャーが入り、オフィスも構えることができましたので、私自身はデータサイエンスに深く集中することができるようになってきました。DataRobot Japanは現在40名を超え、グローバルでは1,000名以上という規模にまでなっています。DataRobot社はヨーロッパなど世界中に拠点がありますが、中でも日本は重要な拠点です。

日本で「DataRobot」が急激に普及した理由はどこにあると思いますか。

オガワ 初期から日本の文化に向き合ったプロダクト開発や支援ができていたところが強みだと思います。

NRIさんにはぜひパートナーになってほしいと思っていたのですが、その理由としては、お客様にすごく深く入り、丁寧にサポートされるコンサルティングの会社だという印象を、私自身が前職から持っていたというところがあります。信頼もしていますし期待もしています。

NRI側からのDataRobot社の印象はいかがでしょうか。

大野 印象的なのは、「成功」という言葉を重要視されている点です。ツールを販売するだけではなくて、そのツールでお客様をどう成功させるかということに、会社として重きを置かれている。弊社も昔から「共に栄える」というキーワードがあるのですが、お客様と共にどう栄えていくか、お客様をどう成功させるかというところがあって、そういったところは企業的な文化も共有、共感できます。

「米国での市場がこうだから日本もAI市場はこうなっていくはずだ」といった知見をいただける一方で、やはり日本特有の商習慣もあると思うので、そういった点は日本発で「AIをこういう使い方をしたら、こんな価値が出る」というところを一緒に作っていけたらいいなと思っています。米国からのトップダウンというよりは「日本のお客様をAIでより成功させる仕組みをつくりました。これを米国でもやってみませんか」というくらいになっていけると、いろいろ面白くなるのではと(笑)。

オガワ 実は、今もそういう部分はあるのです。「テーマが定まっていない会社」へのアプローチ方法などは日本のメンバーで作成し、それがグローバルスタンダードになりました。パートナーさんへのインフラ面でのトレーニングプログラムも、最初はグローバルになかったのですが、私が作った資料を「ジャパン・クオリティ!」と称されて使うようになりました(笑)。当時、米国ではインフラ面をトレーニングするという概念がそもそもなかったようですが、継続的な関係をパートナーと築いていくためには相手にも育っていただく必要があるだろうと考えています。また、パートナーさんとうまく協働できている国は日本が一番だということもよく言われています。

大野 NRIグループのさまざまな部署の社員も「DataRobot」のトレーニングプログラムを受講してスキルを身に着けています。

オガワ 我々としては、そこがすごく強力な部分だなと感じています。「DataRobot」のパートナーとしてメインの窓口が整っていくことはさまざまな会社で見られますが、そこから先の、私たちが直接やりとりをしない実際のお客様の現場にいらっしゃる方々にも「DataRobot」のトレーニングを受けていただけているというのは、NRIさんならではの強いところだと思います。モチベーションも高く、トレーニングでは質問もすごく多い。みなさん真剣に取り組んでくださっています。

大野 DataRobot社の方を前にしてこんなこと言うのはおかしいかもしれませんが、現時点では「DataRobot」が最有力候補なので、とりあえずそこを勉強しておけばベンチマークとして知識がつけられるという、こちら側の事情もあります。ひとつキープロダクトで経験を積めば応用が効くのです。英語をマスターした人が第二外国語をマスターしやすいように(笑)。ですから、今いちばん注目されているツールでお客様からのご要望もあるので、みなモチベーション高くトレーニングを受講しているのだと思います。

実際にNRIのお客様からも「DataRobot」については問い合わせなどが多くあるのでしょうか。

大野 ありますね。いま機械学習の分野で製品比較をすると、米国の調査会社がまとめたリポートでも「DataRobot」は突出してランクされていますから注目されています。

ただ、弊社としては特定のベンダーというよりはお客様に最適な価格帯、最適なソリューションを、お客様の事情も勘案して提案しています。ひとつの型は身に着けますが、その他も含めて複合的にご提案しています。

そのツールというのも、日々進化しているわけですよね。

オガワ そうですね。「DataRobot」はクラウド版とオンプレミス版の2種類を提供しているのですが、毎週、クラウド版では修正と新機能が入ってくるようなスピード感です。

注目のツールなので、各所から問い合わせがあるとは思うのですが、お客様によっても理解度がさまざまではないかと思います。

福島 興味を持ってくださっている方はたくさんいらっしゃるのですが、たとえばそれが単純に平均を取れば済むような話でしたら、「DataRobot」ではなくシステム開発でやればいいことだと判断する場合もあります。データ分析って難しいと思われる方がたくさんいらっしゃるのですが、本当に大事なことはそれで何をしたいかということなのです。ただ面白そうだから統計をやってみたいとか、よくわからないけれど分析してみたとか、そういうことだと自己満足で終わってしまうのです。

オガワ そういうことをよく「自由研究」などと呼んだりします。自由研究だと成果を出さなくてもいいので、それで終わってしまうプロジェクトもあるとは思います。

大野 AIは魔法ではなく道具なので、結局はそれで「何をやるか」、「お客様にとって今、何が必要か」が一番重要です。たとえば、「全国の営業員の実態は把握できてないけれど、とりあえずAIで営業を効率化したい」といったお話を伺うことがあります。これはたとえ話ですが、営業員の実態がわからない状態でAIを導入したら、仮説に仮説を重ねるようなもので現場はきっと混沌に陥ります。まずは、「営業日報のフォーマットを全社で統一する」とか「案件の進捗を全社で共通の尺度で測る」とか、そういった地道な活動で実態をきちんと把握することが大切だと思います。弊社はコンサルもいますしシステムの部隊もいるので、コンサルがお手伝いしながら現状を理解できる仕組みができたら、その次はAIが活用できるかもしれません。闇雲にAIを導入するのではなく、「今、本当に必要なものは何か」を研ぎ澄ませ、地道に改善を進めて実態を把握した上で、ビジネス上の価値を生み出すことができるテーマを見いだせれば、あとは「DataRobot」にまかせて予測性能の良いAIを作成し、ビジネスに適用すれば良いと思います。スモールステップ、スモールサクセスを大切にして、AIが次々に価値を生み出す姿をお客様とともに作り上げていきたいですね。

オガワ まだまだ機械学習、AIの分野はやっと火がついたくらいだと思っていて。イメージではマッチ棒1本、やっと小さな炎が灯ったなというくらいで、それが消えるか消えないかの大事な時期だなと感じています。ちゃんとパタパタとあおいで、それが強すぎても消えますし、あおがなくても消えてしまう、そういう局面だなと感じています。

それは日本での現状を指すのでしょうか。

オガワ いや、世界で、ですね。日本ではAIが進んでいないという言説を聞くこともあるかと思うのですが、意外にも日本はちゃんと進んでいるところは進んでいます。他社に対して秘密主義で情報が共有されない企業文化というだけで、十分成功しているところは成功していますから。ただ「全社で一斉に導入しました!」というような例はまだ少ないので、そういう成功例がスタンダードになれば面白いなと思います。

大野 一方で、会社全体でAIを導入する際には難しいと思う場面もあります。たとえば、経験と勘で成功してきた社長さんがいらっしゃる企業で、AIがはじき出した結果に従って行動しましょうといっても、たぶん無理です。そうやって成功を重ねてきた企業であれば「AIは押し付け」ですし、「経験と勘」が正義です。人の判断とAIの判断をうまく融合させ、今より良い状態をどう作り出すかが求められます。

自分の成功を否定されたような気持ちになるかもしれないですよね。

大野 誤解がないように補足しておくと、僕自身も経験と勘というのは凄まじいと思っていて、実際に予測モデルを作る時には経験と勘の部分をお伺いします。現場での勘や経験は、1,000回に3回といった極稀に発生する異常状態やその予兆を勘で感じられて対策を打たれるわけです。だから、その3回の起きちゃいけないイベントをとらえるだけの十分な情報量が勘の中にあるんですね。そういうポイントをAIで拾えるようにしてあげれば、基本的には同じような予測ができるはずです。そうやって現場の方にご意見を伺って、製造ラインであればどういうものを見ているのか、いつもより機械の温度が熱いとか、異音がするとか――そういうところが数値化できれば、AIによってその人の仕事を軽減することができます。だから、経験と勘というのはやはり強烈だと思います。

それをAIにデータの一部として取り込むと、盤石ですね。

大野 現状では現場にいらっしゃる方がお困りのポイントにAIを導入してサポートしていきたいと思います。そうして実際に売上が何%か伸びていくことが実証できれば、会社全体にも導入されていくはずです。そんなふうに小さい成功を積み重ねて、最終的に大きな意思決定につなげていければと思っています。そういうやり方で日本企業風土に風穴をあけていけたらいいですね。

オガワ きっとできると信じています。

福島 ぜひやっていきましょう!

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オガワミキオ

オガワミキオMikio Ogawa

DataRobot データサイエンティスト

2016年 DataRobotの日本メンバー3人目として入社。インフラ全般のサポート、トレーニング、パートナリング、プロダクトマネジメント担当後、金融インダストリーのリードデータサイエンティストとして金融業界を中心としたプランニング、案件活動、マーケティング活動などを実施している。前職からデータ分析プラットフォームやアプライアンス型データベースなど幅広いデータ関連プラダクトを担当。

福島 健吾

福島 健吾Kengo Fukushima

上級システムコンサルタントデータサイエンティスト

大学を卒業後、印刷会社でデータマイニングに関する研究やシステム開発業務に従事の後、ネットリサーチ会社に転じ統計解析部門のアナリスト及びマネージャを経て、野村総合研究所に転職。データ分析に関わるプロジェクトに多く携わる。2017年4月に国内で初のデータサイエンスに関する学部が設置された滋賀大学にて、データサイエンス実践に関する講義を担当。2019年1月よりbit Labsに参加。経営情報学修士(MBA)。

大野 真一朗

大野 真一朗Shinichiro Ono

上級テクニカルエンジニア機械学習エンジニア

2008 年 野村総合研究所入社。入社以来、アーキテクト・DBエンジニアとして金融・保険業向けのシステム開発案件を担当。近年、企業における データ活用の背景から、金融、保険、流通、製造等のさまざまな業界向けに機械学習や量子コンピューティングを含む最適化技術を活用した案件を、機械学習エンジニアとして担当。DataRobot Certified Data Scientist(国内第1号)/MCPC Quantum Computing WGメンバー。