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エンジニアが語る、bit Labs(ビットラボ)の現在と未来。石橋 琢磨塩川 祐介

野村総合研究所(NRI)に、新たに誕生した「bit Labs(ビットラボ)」。本記事ではその中核を成すふたつの現場チームから、DX推進グループの石橋琢磨と開発グループの塩川祐介を迎え、bit Labsの現在と未来の展望を探っていきます。

ウォーターフォール型開発からアジャイル開発へ

おふたりのこれまでの経歴を簡単に教えてください。

石橋 NRIに入社して18年目になります。私は、技術領域に軸足を置くテクニカルエンジニア(TE)として、最初の9年はシステムのテストの自動化を行うツールの企画などの仕事をしてきました。その後の9年は、社内の大型の金融系システム案件に入り、技術的支援を行ってきました。この技術的支援というのは標準化の支援のことです。平たくご説明をすると、システムを作る前に作り方をある程度決めて、その後、その決めたやり方にしたがって、たとえば100~200人という単位で一斉にシステムを作り始めますが、その基本となるルール作りをするチームにいました。塩川 私も、石橋と同じくTEとして、2007年に入社しました。入社5年目くらいまでは石橋と同じように標準化についての仕事を行ってきました。そこから、TEという職種のまま、お客様に提案・営業を行う部署へ異動になり、技術周りの営業コンサルティングを行いながら、お客様と向き合ってアプリケーションを制作することも行うようになりました。そこではスマホアプリを効率的に作るためのフレームワークを開発したのですが、それがbit Labsの前身といえる部署でした。

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おふたりともTEとして、大型システム開発の一翼を担ってきた経験をお持ちです。その後、アジャイル開発へとシフトしていく中で、印象に残った経験がありましたら教えてください。

塩川 数年前のことですが、私がTEという立場でお客様に提案・営業を行う部署でアプリケーションを作った時のことです。あるお客様が「新サービスを作りたい」ということだったのですが、リリースまでに3、4ヵ月ほどと、非常に短い時間しかありませんでした。その短期間の中でどんなサービスが受け入れられるのかといったところからお客様と一緒に考えて物づくりをするというプロジェクトを行いました。それは私の中ですごく印象に残っている出来事です。弊社では通常、企業内で使われる基幹システムをつくることがほとんど。しかし、その案件は企業の外にいるユーザーに向けてのもので、条件はありますが、一般ユーザーに近い方々を対象としていました。そういった取り組みは初めてでしたので面白みを感じましたし、先方のご担当者が同じ世代だったということもあり、一緒にものをつくっていく感覚を共有することができました。それは、これまでに感じることのなかった感覚で、自分の中では印象的でした。そのアプリは、今でも多くの方に日常的に使っていただいています。

リリースまでに3、4ヵ月というのは極めて短い開発期間に感じられますが、いかがでしょうか。

石橋 bit Labs全体で見れば、そういった期間での開発案件は結構あります。長くて半年といったところでしょうか。我々がやろうとしていることは、要件が固まっていない状態からお客様と一緒に走ります、ということなんです。お客様の方としても先が見えないリスクのある投資という面もあるので、自ずと予算が限られてきます。だからこそ、短期間のアジャイル開発で結果を出していく必要があるんです。塩川 実は、アジャイル開発の手法については、いろいろなルールや方法があるんですけれど、最初はよく知らずにやっていました。短期間で要件も決まってない中で模索しながらやって、終わってから人に「あれはアジャイル開発だったんじゃない?」といわれて、ああそうだったのかと思ったくらいで。それが2012年頃のことで、「スクラムマスター」という言葉は、その時に知りました。「スクラム」はアジャイル開発の代表的な手法のひとつですが、実際にスクラムを取り入れて開発を行ったのは、その数年後です。bit Labsの前身となる部署で開発した、とあるヘルスケアアプリで、自分たちで内容を精査し作り上げ、いくつかのお客様企業にプレゼンを行いました。思えば、それがbit Labsの原点と言える仕事だったかもしれません。

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従来型の開発手法からのマインドチェンジ

お話を聞いていると、これまでNRIで手がけてきたプロジェクトと比較すると、まるで違うプロジェクトを手がけているのがbit Labsだと感じられます。

塩川 そうですね。ウォーターフォール型の開発とは、ベースとなる考え方がまったく違います。アジャイル開発は、実は考え方が深いんですね。知れば知るほど、「こういう世界観だったのか」と気が付き、見えてくることがあります。特にスクラムはチームのコミュニケーションを重視した手法で、メンバー同士で毎日確認しあい、作っている機能が正しいかどうか定期的に確認の場を設ける――と、それだけ聞くとわかった気になってしまいますが、実際やってみると「全然わかってない」ということが往々にしてありました。結局、何か強烈な体験などで腹落ちしないと、従来型の開発手法からマインドチェンジするのは難しいということが自分の経験からもよくわかります。

時代の変化にともない、これまでの開発手法では通用しなくなってきたと言われる今、bit Labsの目標はどこにあるでしょうか。

塩川 新しいビジネスを支援していきたいという思いが、我々の共通認識です。一発当たれば大きな利益になるビジネスモデルの領域でホームランを打ちに行きたいです。

石橋 それも、大ホームラン。

塩川 そのためにも、とにかく打席にたくさん立っていく。それがつまり、アジャイル開発ということになります。

石橋 まだ実現していませんが、複数のジョイントベンチャーを立ち上げ、ジョイントベンチャー同士で投資した、物理的なラボスペースを作ってみたいですね。そこに、それぞれのチームの部屋があって真ん中に共有のスペースで勉強や情報シェアする場所があって、その中の一室にbit Labsが事務局的に入るようなイメージです。我々は業界の垣根を越えて、いろんな企業と一緒にやっていきたいと考えています。

塩川 現在のところはまだ「受託」といいますか、お客様がつくりたいものをつくります、といったプロジェクトが多いんです。でも、そうではない形で、一緒にあるべきものを探していくこともやっていきたい。そこでイノベーティブな何かが生まれるのではないかと考えています。誰も思いつかなかったもの、bit Labsの名刺がわりになるようなものを、一刻も早くつくりたいですね。

石橋 琢磨

石橋 琢磨Takuma Ishibashi

上級システムコンサルタントアジャイル・プロフェッショナル認定スクラムマスター(CSP-SM)

2001年野村総合研究所入社。金融系大規模プロジェクトで技術支援チーム、標準化チームリーダーを経験。その後、アジャイルやデザイン思考といった方法論や技術を活用して、クライアント企業のデジタルシフトを支援するために、bit Labsを組成。組織を変えることの難しさに日々悩みながら色々な案件に取り組んでいる。

塩川 祐介

塩川 祐介Yusuke Shiokawa

上級システムコンサルタントアジャイル・プロフェッショナル認定スクラムマスター、認定スクラムプロダクトオーナー(CSM、CSPO)

2007年野村総合研究所入社。入社以来、テクニカルエンジニアとして、ミドルウェア開発や大規模プロジェクトの標準化チームリーダーを担当。その後、活動をアプリケーション開発、コンサルティングに拡大し、現在はアジャイルなアプリケーション開発や、Scrumの導入コンサルティングをクライアント企業や社内の開発チームに向けて展開中。