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2018.12.19

DXの成功を握る「プロダクトマネージャ」の人材像と当面の現実解

人物

宮前 英子
Eiko Miyamae

はじめに

最近、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を聞かない日はありません。それにつけても、DXとは一体なんなのでしょうか?何年か前に、そのことを検討しました。抽象的な概念定義や、マクロなトレンドはあるものの、実態としては、国や地域の特性、業種・業態、個別状況ごとに、「解決すべき課題」も「対策」もすべて異なるのだろうし、そもそも予測がつかないものではないか、というところで、当時は落ち着きました。「先行きがわからない、ということだけは、わかっている」― そんな、不確実性の高い環境で、新しい事業やサービス開発の「舵取り」をする責務を担うのが、「プロダクトマネージャ」です。

不確実性への「対応力」を用意すること

「何が起きるかわからない」「向かうべき模範回答が見えない」のならば、そういう状況に対応していけるような、組織的なプロセスや体制を用意していくことがまずやるべきことなのではないかというのが、bit Labsの出発点となったシンプルなアイデアです。プロセスとしては、トライアル&エラーを繰り返す探索型の進め方にシフトしていかないといけない。体制面では、官僚型の縦割り構造から、より原初的な共創型に巻き戻して、多様性をもった複数のプロフェッショナルが融合したコンパクトなチーム組成を目指していくことが重要だと、私たちは考えています。

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このような新しいフレームを作って組織に根付かせていくことが、DX時代の変化対応力の核の一つになるのではないでしょうか。ある意味では、高度にシステム化された分業構造を、いちどシンプルな状態に巻き戻すということが、いま“変革”という文脈で求められていることなのかもしれません。

現場の舵取りを担う「プロダクトマネージャ」

この新しいフレームを回し、変革の成否を握っている中核人材が「プロダクトマネージャ」です。プロダクトマネージャは、これまで、事業計画の策定・実行の現場責任を負っていた「ビジネスリーダー」と、情報システムの開発・運用を統括していた「プロジェクトマネージャ」の、両方の責務・職能が求められるハイブリッド人材です。また、多様なプロフェッショナル人材を活用するという点では、幅広い知識領域を貪欲に吸収するマインドと、“猛獣使い”的な能力まで要求される、スーパー人材であるとも言えます。

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「プロダクトマネージャ」の現実的な適用

しかしながら、当たり前のことですが、一握りの特別な企業でもないかぎり、プロダクトマネージャのようなスーパーマンがすぐに採用できたり、あっという間に育ってくれたりするわけではありません。短期的には、プロダクトマネージャの機能を“ひとりの人物”に担ってもらうのではなく、事業開発経験を持つビジネスリーダーをプロダクトマネージャに据えて、情報システムやテクノロジーに通じた人材を、システム開発面のサポーターとして配置するような手当てをしていくのが、現実的なあり方と考えられます。

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そして、専門性を持った外部パートナーを含めた人材ストックを構築し、事業やサービスの特性やタイムラインに対して、無駄なく柔軟に対応できる体制づくりができると、理想的な状態だと思います。(しかし、これは、既存の予算管理の仕組みとはなかなか相容れない部分があり、悩ましいところです。)

おわりに

先にも触れたように、スーパー人材の発掘・育成は簡単にはいきません。ただ、レガシーな事業領域では埋もれていた人物が、チャレンジングな新領域で革新的な才能を開花させたと言う話もよく耳にします。そういう意味では、「ダイヤの原石探し」が大切なのかもしれません。また、bit Labsでは、サービスデザインやアジャイル関連の教育プログラムをご提供していて、プロダクトマネージャ育成を目的としたものも用意しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

bit Labsのサービス

宮前 英子

宮前 英子Eiko Miyamae

上級システムコンサルタントサービスデザイナー

独立系のソフトウェアハウスでシステムエンジニアとしての経験を積み、2007年に野村総合研究所入社。NRI入社後は、基盤ミドルウェア事業の企画営業・製品開発・プロジェクト導入支援を経験。その後、デザインシンキングやUXデザインといった手法を情報システムの開発に活用するR&Dを推進するかたわら、bit Labsに構想段階から参画。現在は、顧客事業の事業開発部門向けに、サービスデザインやPoC推進の支援をしている。