nri_logo

2021.08.02

創造的な組織をつくるbit Labsビットラボの継続的な取り組み

人物

森 一樹
Kazuki Mori

はじめに

 あなたの組織は「創造的」ですか?市場が目まぐるしく変化し、様々なビジネスが生まれては消えていく昨今。変化のスピードが速く、不確実性の高い、正解のない世界が広がってきています。未知の領域を切り開くためには、想像力を働かせ、新しい価値を創造しつづける、「創造的な組織」が必要です。

 この記事では、「創造的な組織」を作るための考え方をManagement 3.0のコア・コンセプトに当てはめ、実際に実践している事例を紹介します。

Management 3.0 の6つのコアコンセプト

 Management 3.0 では、以下の6つのコアコンセプトがあることを前回の記事で紹介しました。

 Structureを育てる。組織の価値観を従業員に届け、行動規範を組織全員で作り上げていきます。

 制約を整える。組織の中での権限移譲を明確にします。

 コンピテンシーの開発。やり遂げる能力を高めます。先述のゆとりもこの中に含まれます。

 人々をエナジャイズする。モチベーション、エンゲージメントを高めます。

 カイゼンを続ける。本記事の「文化・マインド」で述べた文脈と同じく、失敗を学びに変え、挑戦を続けます。

 チームを強くする。チームを自己組織化に導き、自分たち自身で強いチームを創り上げます。

 この記事では、特に「カイゼンを続ける」「チームを強くする」という2つのコンセプトから、bit Labsが取り組んでいる活動を紹介いたします。

画像

「カイゼンを続けて」「チームを強くする」

 この2つのコアコンセプトは、変化の始まりと、目指すべきゴールの両端を兼ね揃えています。強いチームとは、チームが一つの生物のように自律的に思考し、迅速な意思決定ができるようになったり、市場・環境の変化に合わせてチームが創出する価値を最大化できるような状態を指します。この状態に向かうには、継続的なカイゼンは欠かせません。ただし、トップダウン・指示命令型でカイゼンに取り組むのでは、自律的な思考は生まれません。チームに属するメンバーが自発的にカイゼンし、それがチーム全体へと波及していく。その継続が、チームを変化に強く、しなやかなものへと変革していきます。それが、「創造的な組織」へとつながる道です。

 bit Labsでは、「創造的な組織」へと変わる道のりの中で、様々な形でカイゼンの活動が行われてきました。2017年ごろから行われてきた様々な活動は、今や組織の文化として定着しています。このカイゼンの活動を自分たちで企画し、運営しつづけることで自己組織化へと近づいていきました。

「カイゼンを続ける」活動のManagement 3.0のプラクティスとしては、「Celebration Grid」があります。「Celebration Grid」は「学びを祝う」という考えのもと、様々な成功・失敗から得られた学びを抽出し、全員で祝い・奨励することで、組織を前へと進めてくれます。

「カイゼンを続ける」「Celebration Grid」の考え方を取り込みつつ、bit Labsが実践しつづけてきたのが「ふりかえり」です。ふりかえりで、自分たちの活動を「うまくいった部分はどこか」「よりよいやり方はないか」「成功・失敗から得られた学びは何か」「次へのチャレンジは何か」という観点でカイゼンをし続けます。bit Labsでは、このカイゼンの活動を個人・グループ・チーム・プロジェクト・組織の5つの単位で行ってきました。

「個人」のカイゼン:日記

 bit Labsでの特徴的な取り組みの1つが「日記」です。読者の皆さんの中にも、新入社員のころ「日報」として業務報告をした記憶がある方もいるでしょう。「日報」に近いイメージの活動ですが、「日記」は少しだけ趣が異なります。

 メンバー一人一人が、日々の活動や、感じたこと、気付き、学びなどを自由に「日記」として書き表します。日記の粒度は自由です。毎日1日の単位で書く人もいれば、毎週1週間の単位で書く人もいます。

 日記を通じて、自身の仕事の活動内容・結果を書き出すことは、記憶の整理に繋がるほか、他のメンバーへの情報共有にもなり、かつメンバー間のフィードバックを円滑にする効果も得られます。他人に日記を見てもらい、コメントを貰えば、自分では気づけなかった新しい視点を得られます。また、他人の日記を見ると、自分にはなかった観点・切り口で学び・気づきが書かれているため、他人の視座をトレースして自分の仕事に活かすこともできます。また、互いに日記への感想をフィードバックすることで関係性も高まっていきます。

 メンバーがそれぞれの日記を公開し、共有しあうことで、互いの関係性を高めながら、日々のカイゼンも加速していきます。

「グループ」のカイゼン:お茶会

 bit Labsの中に、共通の背景を持つメンバーが集まった「グループ」があります。そのグループごとに行われているカイゼンがお茶会です。

 お茶会は、日記の取り組みの延長線上にあります。日記では「日記」という媒体を中心にした非同期コミュニケーションですが、お茶会ではメンバーが集まり、互いにフィードバックを対面で行います。拠点が異なるメンバーが多いため、リモート環境でのWeb会議でお茶会は開催されます。

 この会は、プロジェクト開発・プロダクト開発を担当しているメンバー一人一人が主催します。それぞれが毎週30分の時間を確保して、参加者を集めて、お茶会を実施します。お茶会への参加は自由であり、誰もが気軽に参加できます。「お茶会」という名の通り、気軽に参加できることが特徴です。

 お茶会では、主催者が自分の状況を共有するだけでなく、学びを共有したり、成果を自慢したり、フィードバックを与えあう場として機能します。抱えている悩みを共有して、全員で解決する方法を考える会もあれば、プロダクトのリスクを洗い出す会もあるなど、様々なテーマで議論されています。もしプロジェクト・プロダクト内で相談しにくい内容だとしても、この場では心理的安全性の高い場で相談でき、一人で悶々とし続けなくて済むため、特に問題の発生しやすいプロジェクト・プロダクトの初期段階において重宝されています。

 このカイゼン活動は主催者・参加者全員に負担がかからないようにデザインされています。主催者は何も準備をする必要はありません。主催者が自発的または参加者の問いかけに応じて情報を開示していき、その内容は誰か参加者1名によってWikiやホワイトボードなどに可視化されていきます。可視化された内容はその会の間に保存され、議事録のような形でまとめるような事後作業は必要ありません。この気軽さが、3年以上お茶会を継続できている1つの要因です。

「チーム」のカイゼン:ふりかえり

 bit Labsメンバーは一人一人が別々のプロジェクト・プロダクト開発に携わっており、それぞれがチームに所属しています。そのチームの中で、必ず定期的なふりかえりが実施されています。

 アジャイル開発やスクラムを採用しているチームでは、「(スプリント)レトロスペクティブ」としてチームのプロセスの1つに組み込まれているほか、従来型の開発プロジェクトでも、「ふりかえり」を自発的に取り込み、実施しています。

 ふりかえりの中ではチームのパフォーマンスを上げるための話し合いが行われます。問題の解決だけにフォーカスせず、うまくいった部分をよりよいやり方にするためのアイデアを出し合います。

 チームのふりかえりは、基本的には週に一度のペースで、遅くとも1か月に一度のペースで開催されており、実施した内容は日記やお茶会へフィードバックされます。また、日記やお茶会で得られた内容をふりかえりを通じてチームへと還元することもあり、チームの内外で効果的なフィードバックループを形成しています。

「プロジェクト」のカイゼン:プロジェクト全体のふりかえり

 複数チームが集まる10人以上の単位のプロジェクトでも、ふりかえりを行います。プロジェクトの区切りがあったタイミングで、プロジェクトの関係者全員が集まり、話し合いをします。カイゼンの観点は基本的に「チームのふりかえり」と同じですが、プロジェクトの3か月後に向けたアクションや、他プロジェクトにも展開できるような中長期的なアクションを検討するところが特徴的です。

「プロジェクト全体のふりかえり」の結果は、bit Labs内に共有されるほか、bit Labs内のメンバーから見た観点で同様のふりかえりを再度行うこともあり、様々な視点からプロジェクトから得られた学びを吸収する仕組みが出来上がっています。

「組織」のカイゼン:期末のふりかえり&お茶会OST

 bit Labs組織全体のカイゼンとして、上期・下期の期末でのふりかえりを行います。bit Labsのメンバーが集まり、組織全体での上期・下期の学びや気づきを共有し、次期に向けた目標設定に役立てます。

 また、最近では月に一度「お茶会OST(Open Space Technology)」という活動も行われ始めています。Open Space Technologyは、参加者が話したいテーマを持ち寄り、好きなテーマに集まって議論するスタイルのワークショップです。テーマごとに話す時間と話す場所(テーブル)を設定したら、各参加者は話したい・聞きたいテーマに自由に移動し、議論します。

 お茶会OSTでは、通常のお茶会よりも多くの人が参加し、より活発な議論が行われます。普段あまり会うことのない人や、仕事のジャンルが異なる人からも学びを得られるため、組織にとって非常に有意義な活動です。

森 一樹

森 一樹Kazuki Mori

専門領域:アジャイルディベロップメント

チームファシリテーター。チームの力を最大化させ、日本のIT業界を輝かせることをゴールに日々邁進中。
大規模案件を複数経験後、組織をよい方向に促進するためには、「ふりかえり」による継続的なカイゼンが大切だと実感。それ以後「ふりかえり」を突き詰め続けている。
「チームファシリテーション」というチーム力を高める手法を軸に、様々な企業に対して、チームビルディングやふりかえりなどにより企業・組織のアジリティを高めるサービスを展開。
著書として、「ふりかえり読本シリーズ」がある。